外壁・屋根塗装で火災保険を使う場合の利用条件や注意点
日本では台風などによる大雨や強風、雷、豪雪といった自然災害が毎年のように発生し、災害大国とも呼ばれています。
そのような自然災害によって被害を受けた場合には、火災保険で補修費用をカバーできる可能性があります。中には、火災保険を使うことで外壁・屋根塗装を自己負担ゼロで塗装できるという業者もいますが、基本的には塗装工事のみの場合は補償対象外となる可能性が高いので注意が必要です。
このページでは、ご自身が加入している保険によって、補償内容が異なるため、あくまで一例ではありあますが、火災保険の種類や利用する際の条件・注意点について説明します。
火災保険の種類
戸建住宅向けの火災保険は、大きく分けて以下の4種類に分類されます。種類によってカバーする保障内容には違いがあります。
住宅火災保険
住宅火災保険とは、基本的な自然災害が補償対象となっている、最も一般的な火災保険です。火災・落雷・破裂・爆発・風害などが対象となっており、水害・盗難・暴行・破壊・落下・衝突・持ち出し家財の損害などの損害は提要されないため注意が必要です。
住宅総合保険
住宅総合保険は、住宅火災保険に比べ、補償範囲が広くなっている火災保険です。住宅火災保険で対象となっている自然災害に加え、水害・盗難・暴行・破壊・落下・衝突・持ち出し家財の損害などの自然災害以外の災害にも対応しています。
オールリスクタイプ
オールリスクタイプとは、住宅総合保険よりさらに幅広く損害を補償してくれる火災保険です。加入者のニーズによって必要な補償内容を選択することができます。
契約内容によって補償内容は異なりますが、「工事規模を限定せず保険金が支払われる」「付帯サービスとして鍵の紛失や水廻りのトラブル対応などがある」商品があります。
外壁・屋根塗装で火災保険を利用する条件
風災
風災とは、台風や竜巻、突風、暴風などの強風によって起こる災害のことです。保険会社によって強風の定義が異なりますが、基本的には「最大瞬間風速が秒速20m」を超えると風災と認定されます。
【対象になる可能性が高い事例】
・台風や竜巻などの強風によって屋根材や外壁材が破損した
・強風で飛んできたものが、自宅に直撃し穴があいた
・強風で屋根の瓦が飛んでしまった
水災(水害)
水災(水害)とは、洪水や高潮、土砂崩れなどの自然災害によって起こる損害のことです。台風や大雨によって洪水が発生し家屋が流されてしまったときや、一定基準を超える床下浸水が起こった場合に補償されます。
保険会社によって水害の定義が異なりますが、基本的には「建物または家財それぞれ時価30%以上の損害」「床上浸水または地盤面から45cm超える浸水による損害」がある場合に水害と認定されます。
水害の定義は、保険会社で共通で使われている訳ではありませんが、上記の基準が一つの目安となります。
最低限の補償しかついていない住宅火災保険では、水害はカバーされていない場合が多いので注意が必要です。また、家庭の雨漏りや水漏れは水害には該当されません。
【対象になる可能性が高い事例】
・台風によって近くの川が氾濫し、45cm以上浸水してしまった
・豪雨によって近くの山で土砂崩れが発生し、家の30%以上が破損した
落雷
落雷が原因で、建物が破損したり火災が発生してしまう可能性があります。また、建物の破損だけはなく分電盤や電線に落雷し、エアコンやテレビ、パソコンなどの家電製品が故障してしまった場合にも、落雷被害が適用されるケースもあります。
【対象になる可能性が高い事例】】
・落雷の影響で、屋根が破損した
・落雷が原因で、火事が発生した
雪災や雹(ひょう)災
雪災とは、豪雪や雪崩によって起こる損害のことです。雪の荷重のよって軒が歪んでしまったときや、雪崩に巻き込まれて家屋が倒壊してしまった場合に補償されます。
しかし、雪解け水による融雪洪水によって発生した損害については、雪災には含まれず水災として補償されるので注意が必要です。
また雹災とは、雹が降ったことで起こる損害の事です。雹によって家屋が破損してしまった場合に補償されます。
保険会社によって雹の定義が異なる場合がありますが、基本的には「直径が5mm以上の氷の粒」が雹と認められます。「直径が5mm以下の氷の粒」は霰(あられ)と定義されています。
【対象になる可能性が高い事例】
・雪の荷重で雨樋や屋根が歪んだ。
・屋根から落下した雪の塊が、外壁に直撃し破損した
・降ってきた雹によって、屋根や外壁が破損した
保険適用外となる事例
次のような事例の場合、基本的に保険適用外となります。
・経年や老朽による劣化
・施工不良
・新築時から見られる症状
また、塗装工事だけでは保険適用されないケースが多いので注意が必要です。
保険適用されない要因としては、災害よって受けた被害を塗装工事のみで修復できるケースが少ないためです。屋根の葺き替え工事や板金工事などの修繕作業であれば、火災保険が適用されるケースは多いです。
火災保険を利用するときの注意点
火災保険の適用条件は、保険を販売している保険会社によって異なります。その中でも、ほとんどの保険商品で共通している、利用の際の注意点は以下の5つです。
被害を受けた災害に対して補償対象となる保険に加入していること
保険金で工事を行うためには、被害を受けた災害に対して加入している火災保険が補償対象となっていなければ保険金を受け取ることはできません。
例えば、ほとんどの火災保険で通常プランに水災が含まれていない商品が多いので注意が必要です。事前に「加入している火災保険の補償対象」や「住んでいる地域で発生する可能性がある災害」について確認しておくことが重要です。
リフォームの工事費用が免責金額を下回っていないこと
免責金額とは、保険加入者が自己負担しなければならない金額のことです。災害によって生じた被害箇所の修繕費用が、免責金額を下回っている場合には、保険金が支払われず自己負担で対応しなければいけません。
加入している火災保険の契約内容によって免責金額が異なりますので、事前に「加入している火災保険の免責金額」について確認しておくことが重要です。
災害によって受けた被害であること
災害によって受けた被害ではなく、自然現象によって起きた被害の場合は補償の対象外となるので注意が必要です。
火災保険は不測かつ突発的に起こった損害に対して補償を行うものなので、加入している保険会社が災害として認めている定義から外れている場合や経年劣化により発生した損害の場合には補償を受けることはできないので注意が必要です。
被害発生から3年以内に申請が必要
保険請求期限は、保険法第95条によって災害による損害発生から3年以内と定められています。
しかし、3年以内に申請をしたとしても被害が発生してから時間が経ってしまった場合は、状況から被害要因や被害との因果関係を説明することが難しくなるため、保険金が適用されない可能性が高くなってしまいます。
保険適用の可能性がある場合には、被害を受けてから可能な限り早く保険会社へ申請する様にしましょう。
火災保険を悪用する業者に注意が必要
業者の中には、火災保険のシステムを悪用して詐欺行為を働く業者もいるので注意が必要です。悪徳業者がよく使う手口には以下のようなケースがあります。
・不要な工事を追加される
被害箇所の修繕費用が、免責金額を下回っている場合は保険適用外となってしまうため、悪徳業者は保険金が支払われるように必要のない補修工事を次々と追加し、相場よりも高額な費用を請求してくるケースがあります。
仮に、不要な工事を追加して火災保険の審査を通過することができたとしても、高額な費用のせいで振り込まれた保険金が差し引かれてしまうだけではなく、悪徳業者に追加費用を請求される場合もあるので注意が必要です。
・火災保険で塗装工事の費用が無料と勧めてくる
悪徳業者の中には、「火災保険の保険金で塗装工事が無料でできます」「屋根の修理リフォームを無料でできる裏技があります」などと、「無料」を強調し火災保険を使った塗装工事を勧めてくるケースがあります。
基本的には、災害よって受けた被害を塗装工事のみで修復できるケースが少ないため、塗装工事のみでは火災保険は適用されません。そのため、「火災保険で塗装工事の費用が無料」のような、誤解のしやすい誇張表現で勧めてくる業者には注意が必要です。
・火災保険申請をするために虚偽の報告をするよう強要される
火災保険が適用できない被害であるにも関わらず、火災保険申請の際に保険会社へ火災保険が適用されるよう、保険会社へ虚偽の報告をするよう強要する悪徳業者には注意が必要です。
もし、悪徳業者の指示通りに保険会社へ虚偽の内容で申請してしまうと、保険会社から悪徳会社と共謀して詐欺行為を行ったみなされ、保険金詐欺の加害者となってしまう可能性があります。
【火災保険で起こるリフォームトラブルについて】
日本損害保険協会:https://www.sonpo.or.jp/news/caution/syuri.html
国民生活センター:http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20201001_1.html
火災保険を利用する方法
火災保険を利用する際の流れは以下の通りです。
塗装業者などの業者に連絡をする
被害の発生をした場合、まずはご自身で塗装業者などの業者へ連絡をし、建物の状態を調査してもらうよう依頼をします。
業者による建物の調査
業者による調査では、被害を受けた箇所が自然災害によって発生したものか、経年劣化によって発生したものかを建物全体を調査し業者が判断します。
調査報告書・見積書の作成
建物の調査が終了すると、業者が調査報告書・見積書を作成し、お客様へお渡しします。一般的には見積書の提出には、現地調査後1~2週間程度かかります。
保険会社へ事故報告の連絡
業者による調査によって被害状況が判明したら、業者もしくはご自身で保険会社へ事故の電話報告をします。電話報告では、被害が発生した日時や被害状況などをわかる範囲で保険会社へ伝えます。
保険会社へ必要書類を提出
事故報告の後、保険会社から保険金請求に必要な書類が送付されますので、内容を記入し保険会社へ提出します。
保険会社へ提出する主な書類は次の通りです。
・保険金の請求書
・事故の報告書
・見積書
上記のほか、各保険会社によっては被害状況のわかる写真や建物の図面、罹災証明書、登記簿謄本などが必要となるケースもあるので、事前に保険会社へ必要書類を確認しておきましょう。
鑑定人による調査
必要書類を保険会社へ提出した後に、加入している保険会社側の鑑定人による調査が行われます。
鑑定人によって、被害を受けた箇所が自然災害によって発生したものか、見積書に記載されている内容が適正かなど、申請されている内容が妥当であるか調査し確認します。
保険金額の決定、保険金の支払い
鑑定人による調査で、被害が自然災害によるものと認められ被災額が確定すると、保険会社によって保険金額が決定し保険金が指定の口座へ支払われます。
保険金の支払い期日は原則として、申請から30日以内とされています。
被災箇所の工事開始
保険金の受け取りが完了したら、被災箇所の工事をご自身で依頼した業者が行います。
まとめ
火災保険では、火災による被害だけではなく自然災害などにも保険適用される場合があります。加入する保険によってカバーしてくれる補償内容は異なりますので、ご自身の状況に応じて適切な火災保険に加入する必要があります。
ハザードマップなどでご自身の住んでいる地域で発生する可能性がある災害を確認したり、加入している保険内容を定期的に確認しておくことが大切です。
また、火災保険を悪用し塗装工事を勧めてくる業者には注意が必要です。少しでも気になることがあれば、すぐに契約はせずに加入している保険会社へ直接相談すると安心です。